◆サプライチェーン・セキュリティ対策
  米国関税局の新たなセキュリティスキーム(C-TPATとCSIについて)
トップページサプライチェーン・セキュリティ対策ニュース関連>米国関税局の輸入セキュリティ・スキーム、C-TPATの開始

米国関税局の輸入セキュリティ・スキーム、C-TPATの開始
2002/04/18

1.C-TPATの正式な開始
 輸入貨物に紛れてテロリスト、大量破壊兵器等が流入することを阻止することを目的とした米国関税局のセキュリティ・スキーム、C-TPAT(Customs – Trade Partnership Against Terrorism)が、米国・カナダ国境に接するデトロイト、アンバサダー橋で4月16日から開始されました。また翌17日には、全ての輸入者に対してC-TPAT参加手続きがオープンにされました。今後、各地の国境税関、航空貨物・海上貨物へ順次拡大されていくと見られますが、具体的なスケジュールは明らかにされていません。

2.C-TPATの参加手続き[1]
 C-TPATプログラムとは、輸入関連企業(船会社、通関ブローカー、倉庫管理者、輸入者、製造者)が、関税局の示すガイドライン(C-TPAT Security Recommendations)に沿ってサプライチェーン・セキュリティ・コンプライアンスプログラムを策定し、関税局と協力しながら実施していくボランタリー・プログラムです。その参加手続きは、質問状(Supply Chain Security Profile Questionnaire)に基づいて自社のコンプライアンス・プログラムの概略(Profile)を回答するとともに誓約書(Agreement to Voluntarily Participate in Customs-Trade Partnership Against Terrorism)を提出します。関税局の審査によって参加が認められれば、迅速な輸入通関、低い貨物抜取検査率等のベネフィットが与えられます。C-TPAT参加手続がオープンにされたことに伴い、参加手続きに関するインストラクションが、概要下記の通り発表されています。

申請の仕方[2]
(1)
誓約書に署名し、関税局に提出する。誓約書は、申請者が関税局のセキュリティーガイドラインにコミットすること、及び申請者のサプライチェーンに係わるサービスプロバイダーとともにセキュリティ強化のために協力することを誓約するものである。誓約書への署名は、C-TPATプラグラムへの参加条件となっているコンプライアンスプログラムの社内実行責任者によるものでなければならない。
(2)
誓約書2部に署名し、下記宛先へ提出する。
United States Customs Service
Office of Field Operations
Industry Partnership Programs
1300 Pennsylvania Avenue, N.W.
Room 5.4C
Washington D.C. 20229
Attention: C-TPAT
(3)
誓約書には下記内容を記述したカバーを付ける。
  1. 正式会社名
  2. 住所
  3. 担当者名(関税局からの問合せ先担当者について下記を明らかにすること)
    1.担当者の所属部署名と役職
    2.電話番号
    3.ファックス番号
    4.Eメールアドレス
(4)
質問状の内容に全て答え、次のいずれかの方法で送付する。
  1. 質問状の回答を電子ファイルで3.5インチフロッピー、またはCD-ROMに保存し、上記(2)の住所へ郵送する。
    または、
  2. Eメールで下記アドレスへ送る。
    mailto : industry.partnership@customs.treas.gov なおEメールの件名蘭に、企業名と「Security Questionnaire」を記入する。
(5)
質問状に対する回答作成にあたって下記を参照されたい。
  1. サプライチェーン・セキュリティ・コンプライアンス・プログラムの焦点は、輸入サプライチェーンにあるが、その中には、貴社がオペレーションを行っている/取引している外国も含まれる。
  2. 質問状への回答には、コンプライアンス・プログラムの概要(エクゼクティブ・サマリー)を付けなければならない。サマリーは、貴社が現在実施している社内セキュリティ手続きの構成内容(Process element)を説明するものである。また、サマリーは、貴社が利用しているサービスプロバイダーを明示(identify)し、かかるサービスプロバイダーがセキュリティ・プログラムを実施していることを確認していることを含む。
    ノート
    貴社が利用しているサービスプロバイダーのセキュリティプログラムの詳細を、貴社のセキュリティプログラムの一部を形成するものとして関税局に送付してはならない。
  3. 貴社の利用しているサービスプロバイダーが下記のいずれかの関税局のセキュリティ・プログラムに参加しているか否かを記述する。
    The Customs-Trade Partnership Against Terrorism(C-TPAT)、the Carrier Initiative Program(CIP)、the Super Carrier Initiative Program(SCIP)、the Business Anti Smuggling Coalition(BASC)
  4. 申請者のセキュリティ・プロセスでカバーされる輸入実行者(Importing Entities)を輸入者番号(IRS Number)とともにを明記し、申請者との関係を記述する。
(6)
申請を受理して、関税局は質問状回答を審査する。審査終了後、関税局副長官、Office of Field Operationsが署名した「Customs-Trade Partnership Against Terrorism」を一部、付帯意見とともに60日以内に申請者に送付する。

3.開始時点4月16日)での米国企業のC-TPAT参加と実施状況
 これまで、米国関税局はローリスク・インポーター約200社だけにC-TPATプログラム参加を呼びかけてきました。4月16日時点では、既に60社が参加を認められ、100社が審査中となっています。参加企業には、GM、フォード、ダイムラー・クライスラーの自動車メーカービッグ3に加え、サラ・リー(食品・家庭用品製造・販売)、ターゲット(大手小売チェーン)があります。[3]
 アンバサダー橋での通関業務は次のようなものになると想定されています。輸入者(ここでは上述の自動車メーカー)は、輸入貨物に関する情報(運転手の名前、積載貨物の内容、カナダの出発地、米国内の目的地など)を事前に税関に届けておき、トラックが国境に到着する約15分前に、輸入者は間もなくトラックが到着することを税関に電子的に通知します。トラックに搭載されたトランスポンダーから発信された信号を税関が受信することによって当該トラックと積載貨物を確認し、トラックは数秒で税関を通過することになります。しかしながら、C-TPATプログラム非参加者は、このようなパス・スルーに近い通関取扱を受けることはありません。
 現実にこのような迅速な通関が本当に保証されているのかは、今後の運用状況を見なければなりません。また、非参加社に対する取扱がどのようなものになるのかについても詳細は明らかではありません。いずれにせよ、米国税関は、今後国内各地の税関にトランスポンダー受信機を装備する予定にあるとのことです。つまり、C-TPAT参加者は今後、トランスポンダー装備等の出費を強いられることになりそうです。

4.C-TPATの今後の見通し
 ローリスクインポーター200社は、税関によってオーソライズされた何等かのセキュリティ・コンプライアンス・プログラムを既に実施しています。他方、まだコンプライアンス・プログラムを整備していない企業が参加するためには、コンプライアンス・プログラム整備という投資を行わなければなりませんが、果たしてその投資に見合うだけのベネフィットを本当に税関から与えられるかという疑義があります。また、C-TPATプログラムのベネフィットとして、税関は参加企業毎に税関側担当者(アカウント・マネージャー)を定めることになっていますが、参加者が多数に上った場合、税関側は要員を確保できないのではないかという疑義があります。
 C-TPATプログラムとはボランタリー・プログラムであって義務ではありません。しかしながら、これまでローリスクインポータ200社に対して、プログラム参加を促す強い働きかけがあったと言われています。また、米国内企業を対象としたものであり、海外企業を対象とするものではありません。しかし、グローバル化した国際取引の中で、米国外へ長く延びたサプライチェーンがプログラムの対象となっており、対米輸出・投資を行っている外国企業には、C-TPATプログラムに沿ったコンプライアンスプログラムを実施するよう輸入者側から強い要請があることも考えられます。[4]
 いずれにせよ、公式にC-TPATプログラムは開始されたことから、参加申請するようプレッシャーが強まることは確実と言えるでしょう。

5.議会の動き
 C-TPATを始めとする関税局の輸入セキュリティ・スキームに関する法案は、上院法案Maritime and Rail Security Act of 2001(S-1214)と下院法案Maritime Transportation Counter terrorism Act of 2002(H.R. 3983)があります。上院案については既に可決されていますが、下院案では、関税局、運輸省、移民局など関係省庁の所管争いの様相を呈しており、方向が見えなくなっております。


--------------------------------------------------------------------------------
[1] C-TPATの概要と経緯についてはJMCジャーナル2002年4月号P60参照、またはここをクリック
[2] "Application Instruction for Importers Customs-Trade Partnership Against Terrorism"
(www.customs.treas.gov/enforcem/instructimp.htm)
[3] これら5社にBP America, Motorolaの2社を加えた7社はC-TPATのプログラム策定段階から参画している。
[4] 最近では、セキュリティ対策を取っていない貿易企業には、一部米国損害保険会社は保険を付保しなくなりはじめたとも言われております。

以上


戻る