◆サプライチェーン・セキュリティ対策
  米国関税局の新たなセキュリティスキーム(C-TPATとCSIについて)
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C-TPATセミナー概要
2002/06/12

1.開催日時:
2.場   所:
3.講   師:
平成14年5月31日(金)1:30~4:30
機械振興会館 地下3階 研修2号室
Tommy L. Berry氏、 Director of Trade and Customs、KPMG
八田 陽子氏、   Partner、Tax、KPMG


講演概要:

(1)C-TPAT(Customs-Trade Partnership)

①制度の背景と動向
  • テロの攻撃から米国の国益を守ることとスムースな経済活動との間であらたなバランスを取るために、貿易を管理する関係当局の役割を見直す必要があるとの観点からC-TPATは導入された。
  • 昨年9月の同時多発テロ事件以来、米国ではテロ防止に対する意識が極めて高く、また今年秋の中間選挙を前にして、米国政府は、テロ対策に積極的に取り組んでいるという姿勢を示さなければならないという政治的背景がある。
  • 現在はボランタリープログラムであるが、早晩法律に基づいて義務化されるという見通しに立って、関税局はC-TPATプラグラムへの参加に強い圧力をかけている。当初ローリスク・インポータ210社に手続きを呼びかけ、5月末時点で約90社が参加。今後2~3ヶ月の間に180程度まで参加者を増やすべく圧力をかけており、事実上強制参加となっている。現在すべての企業に対してオープンになっているが、ローリスクインポーターの参加にこだわる理由は、この200社で米国輸入の80%をカバーすることになるからである。C-TPATに参加しないローリスク・インポーターに対してはローリスク・ステータスの剥奪も検討している。
  • 現在のコンテナ検査率2%程度を、将来的に10%に上げる予定。このため税関の検査官を1300人、捜査官を200人増員する予定。これが実現すれば税関現場での検査担当者の数は5倍になる。セキュリティに関して現在14の法案が提出されている。
  • C-TPATの法案審議は遅れているが、今年秋の中間選挙前には可決され、来年から法律に基づく義務的プログラムとして実施されることになると見られる。

②プログラム運用の概略
  • C-TPATの定義:企業の管理機能を強化することによって、国際的なサプライチェーンを保護するための関税局と企業の協力関係を築くこと。
  • 企業にとっての目的:社内セキュリティプログラムを自己評価してセキュリティに関する責任の所在と分担を明確化する。また、社員教育を実施し、継続的に自己改善を実施していく。
  • 政府にとっての目的:米国の国境線を輸出国まで押し戻す(Pushing Back the US Borders)。
  • 米国政府は対テロの戦いを積極的に推進していくことにしており、したがって輸入企業も米国の対テロの戦いに協力すべきであるとのメッセージを浸透させる。
  • C-TPATに自発的に参加することで、グリーンライト・クリアランスと呼ばれる簡素な通関が可能になる。ローリスクのステータスを維持することは極めて重要である。
  • C-TPATの対象:C-TPATの対象は輸入者である。基本的には輸入者が、海外の製造工場から米国までのグローバル・サプライチェーンに包括的に責任を持つ。
  • 輸入者が、海外の輸出メーカーの関係会社であった場合、海外の製造工場まで含めたセキュリティ管理を求められることになるだろう。輸入者が米国で製造する製品に組み込まれる部品を輸入している場合、その部品に対しては輸入者が責任を持つべきであるということである。
  • キャリアー、フォワーダー、倉庫会社などのサービスプロバイダーはグローバルベースでサプライチェーンのセキュリティ管理を行う能力が無いと見ている。また、輸入者は、サービスプロバイダーを選択できる立場であり、したがってセキュリティ管理を実施するようアグリーメントを契約に盛り込むことも可能である。
  • 米国で積み替えて、米国内に入らずにインボンドでメキシコのマキラドーラなどへ出荷される場合にもC-TPATの対象となる。また逆に、メキシコの工場で生産された製品が米国の港から第3国へ輸出される場合でも、メキシコから米国へ輸入されるという点においてC-TPATの対象となる。

③現状の問題点
  • C-TPATプログラムに参加すると、関税のMonthlyあるいはBy monthlyでの支払いが認められるというベネフィットが与えられることになっているが、すぐには無理であろう。現在新しい自動通関システムACE(Automated Commercial Environment)の構築を行っており、このACEが立ち上がるまでこの新しい関税徴収方式は実施できないだろう。現在の税関はコンテナチェックに追われており、前述の1300人の増員が実現するまでは、今ある以上のことを税関に求めることは不可能。つまり、米国関税局のホームページに記載されているにもかかわらず、参加のベネフィットは実行されていないということ。
  • C-TPATの今後のスケジュールについて言えば、今後2~3ヶ月の間に180社の参加を実現しようと努力している。その段階でC-TPATに参加しなかったローリスク・インポーターへの対応措置についてメッセージをだすことができるようになるだろう。その段階ではまだ増員された1300人を配置するにはいたらず、現行人数でチェックしていくとなり、貨物検査に非常に長い時間がかかることになると考えられる。
  • 米国内でもC-TPATプログラムについての周知が十分とは言えないが、ここ数ヶ月の間に周知は進むだろう。


(2)CSI(Container Security Initiative)
  • CSIは外国の輸出港と連携し、貨物輸送のセキュリティを高めようとするプログラムで次の4つの要素から構成される。すなわち①ハイ・リスクコンテナに対するセキュリティ基準を確立する、②輸出港でコンテナの事前スクリーニングを実施する、③X線装置などを使用してコンテナの事前スクリーニングを実施する、④電子シールやセンサーを装備したスマート・コンテナを開発し使用する。
  • C-TPAT参加者による輸入貨物だけが積載されているコンテナはローリスク・コンテナとしてグリーンライトクリアランス措置により迅速な通関が可能になる。逆に、輸入者がC-TPAT非参加者で、積載貨物がフォワーダーによって混載されている場合、ハイリスク・コンテナとして取り扱われる。
  • 2~3年のうちに、米国政府はCSIと同様のセキュリティプログラムを整備するよう他国に働きかけてくるだろう。事前スクリーニングをした貨物に証明書を出すという国際的な制度ができれば効率的になるだろう、
  • 米国への輸出が多い10港(メガポート)から始められる。 *最近米国政府は20メガポートといい始めている。また6月4日、シンガポールがCSIを実施することで米国と合意した。現在香港とも交渉が行われている。


(3)事務局の所感
  • テロに対する危機意識が突出する一方、C-TPAT実施に対する法制度、実施体制が未整備である。すなわちボランタリープログラムであることなどから、具体的な運用基準、責任範囲が不明確であり、また基本的に輸入者が包括的に責任を負うという広い責任範囲を想定している。
  • C-TPAT、CSIは本質的には米国本土防衛を目的としたものであるが、そのための負担を外国にも分担させようとするものである。しかしながら、不十分な情報提供により、米国内および米国外の双方での周知が現状では不徹底。
  • こうしたことから、C-TPATプログラム参加にかかわる負担は予想以上に重いものになる懸念がある。
  • テロに係る危機認識において米国と諸外国との間で隔たりが大きければ、C-TPATに対する外国企業の協力を得にくい。このため国際的な場で米国が働きかけを強化してくることが考えられるので、こうした動きに注意を払っていく必要がある。
  • * 今月下旬にカナダで開催されるサミットで、輸送セキュリティをアジェンダとするよう米国が提案している。

注:*印の箇所は、セミナー後、事務局が入手した情報による補足。

以上


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