1.WSC(World Shipping Council 世界の主要船社約40社から構成される米国の業界団体)
(1)Timing of Filing Advance Manifests
- 貨物積込24時間前申告のために、荷主はさらに24~72時間前に貨物情報を船社に提出することが必要となる。貨物積込後または出港後に貨物情報が提出されている米国の現状から比較すれば、24時間前申告要件は現状より1週間あるいはそれ以上前に荷主が貨物情報を提供することを意味する。
- 船社はB/L情報がなければ事前申告貨物情報を提出できないが、B/L情報は荷主から船社に貨物が渡されて作成できる。関税局が事前申告情報を分析し、その内容に基づいてホールドの指示を出すことになっているのであれば、関税局は迅速に情報分析し、貨物積込開始される前に十分な時間的余裕を持ってホールド指示を通知することが求められる。この申告と通知の時間的な枠組みが決まらなければ、船社は積込スケジュール(Stowage Plan)を決定できない。一旦積込が開始された後にホールド指示が通知された場合のコストと遅延は非常に大きな負担となる。このことから以下の4点を述べる。
①
関税局からホールドの指示がなければ、事前申告された貨物は問題なく船積みできると考えるが、この点について関税局の確認を求める。
②
事前申告情報の審査にどれくらいの時間を要するのか知っておくことは、船社にとって極めて重要であることを強調したい。
③
事前申告は海外に駐在する米国税関検査官が情報を分析しハイリスクコンテナを特定ことを可能にするとしているが、これが真に機能するか不明である。米国税関検査官は限られた港(CSI参加港)にしか駐在していない。また貨物積込オペレーションは世界中で24時間/365日で行われているが、海外駐在検査官が24時間/365日で働くとは思われない。
④
米国税関検査官が駐在していない世界の大半の港ではどのように機能するのか不明である。事前申告情報の審査と通知を24時間/365日ベースで行うコミュニケーションセンターの設置を必要とすると考えられるが、このようなコミュニケーションセンターが稼動するまで24時間ルールがどのように運用されるか不明である。
(2)Number of Filings and Workload
①
これまでは、米国入港前にマニフェストを提出していたので寄港地の数にかかわらず、一航海あたり1本のマニフェスト申告であったが、事前申告になることから一航海で多くのマニフェストを提出することになり、関税局は非常に多数のマニフェスト情報を扱うことになる。
②
関税局は、事前申告されるマニフェスト数を過少評価している。24時間ルールで推定されているマニフェスト数は、船舶一隻当たり年間100のマニフェストとなっている。しかし、米国向け太平洋航路では、一回の運航で5つの港に寄港し、年間260のマニフェストを申告している。
③
自動マニフェストシステム(AMS)がどのように事前申告情報を処理するのか確認しておきたい。ルールに従えば、船社は寄港地毎にマニフェスト情報を事前申告することになるが、AMSがそれぞれのアメンドメント申告情報を区別できないのではないかと懸念している。
(3)Need for Flexibility to Address Secure, Specific Supply Chains
- WSCは関税局のセキュリティ努力を支持するが、その運用は柔軟に行われるよう望む。例えば、C-TPAT参加者である荷主のコンテナについては遅延するようなことになるべきではない。
(4)Enumerated Manifest Information Items-Item7: Cargo Descriptions
ルールでは貨物の詳細な説明を求めFAK等の一般的記述を禁止し、HSコードでの記述を認めている。
①
HSコードの何桁を使用するのか明確にしもらいたい。
②
HSコードを用いない記述についての、統一的なガイドラインがない。
③
全ての米国税関で統一的に、共通に解釈されるガイドラインを強く望む。各税関毎に解釈がことなるのはフェアではない。
* WSCのコメント原文は以下URLから入手可能。
http://www.worldshipping.org/customs_manifest_comments.pdf
2.IMRA(International Mass Retail Association 米国の小売量販業界団体)
- 外国港で船積み24時間前までに貨物情報を申告するためには、キャリアはコンテナを出港の2~3日前に受け取らなければならない。これは、迅速に処理されていた輸出コンテナの混雑をもたらすものである。また、効率化され短縮化された小売サプライチェーンにとって、在庫管理費用を上昇させるものである。
- 貨物マニフェストは、セキュリティに関するリスクアセスメントには不適切な文書である。
- コンテナは船積み前に、少なくとも24時間はコンテナヤードに留め置かれることになるので、貨物盗難を増やすのは確実である。港湾における盗難は、既に米国経済に対して年間12億ドルのコストをもたらしている。
- 米国関税局は今回の規則案を撤回し、よりよい規則策定のために貿易関係者と協力すべきである。(9月6日付けJournal of Commerce)
3.ICS(International Chamber of Shipping:本部ロンドン)(日本船主協会の情報)
(1)Summary of this organisation's view
- 貨物情報が完全になる前の、貨物の船積み前にcarrierに情報提出を求めることは 現状の貿易慣行を根底から変えることに他ならず、短・中期的では実現不可能と考える。
(2)Impact of the proposed rule
a)
Carrierが規則に対応するためには、これまでより2~4日程度早めに貨物を受領する必要があり、従って貿易関係者は追加蔵置期間の費用を負担することになる。"Just-in-time"の貿易に向け投資してきたことを考えれば、この現象は経済効率を大きく後退させることになる。
b)
本規則は、情報提出者であるCarrierの実行性を無視したものである。
c)
米国寄港までの間、複数の港で貨物(米国揚げ貨物でなくとも、米国寄港時に積載中となる貨物も含む)を積む場合は、その都度船積み24時間前に情報提出しなければならず、事務処理作業が著しく増える。
d)
B/L記載の貨物量と実際に積載した貨物量が一致しない場合の通知を求めているが、船積み24時間前に情報提出しなければならないので、同通知は不可能である。
e)
貨物の中でもバルク貨物は、予定の最終寄港地までの間に、寄港地が変更される場合もある。
f)
バルク貨物については、実際に積み込まれるまでは正確な積載量はわからない場合がある。
(3)Responses to specific questions posed in the proposed rule
a)
情報収集方法と情報の有用性:船積みする前の24時間の間に貨物情報が変更される可能性があり、また、米国税関の情報分析時間は24時間しかないため、規則案で定められた方法では適正な情報の収集及び分析は困難と思われる。
b)
情報提出に係る負担:米国税関の予想をはるかに上回る負担になると思われる。
c)
情報の有用性等の向上方法:貨物情報はcarrierではなく、貨物のbuyerやsellerから船積み決定前に収集する方が、情報の正確性も向上し、情報分析の時間も充分確保でき、また、物流効率上も有効と考える。
・上記アイディアについては、関係業界と米国税関が直接検討できる機会、もしくはWCO等で国際的制度として検討する機会を設けてもらえれば参加したい。
d)
情報収集に係る負担の軽減策:米国向け貨物はカナダ向け貨物としてカナダ港湾まで運び、陸路輸送すれば、米国税関への情報提出の必要はなくなるが、貿易効率的にもテロ対策的にも有効ではない。
e)
規則案対応のための経費
以下についてはコスト増額になると思われる。
①コンテナ及び他貨物関連機器の追加賃貸コスト
②貨物積込前の追加蔵置場所確保に係るコスト
(4)規則施行前に実行性を検証する期間を設けるべきと考える。
4.NIT League(National Industrial Transportation League:米国の輸出入企業700社から構成される団体)(9月13日付けSouth China Morning Post紙)
24時間事前申告ルールの実施は、ファイナル・ルール発表から12ヶ月後とし、さらに3ヶ月の「Phase in 」期間を設置すべき。
5.各コメントに関する米国関税局の見解(9月23日付けLloyd’s List)
9月18日にニューヨークで開催されたUS Security Maritime Conferenceで、米国関税庁副長官のDouglas Browning氏が24時間事前申告ルールについて概要下記のとおり見解を明らかにした。
①
規則案が導入された場合、関係業界は、必然的に従来のビジネス手法の変更を迫られることになる。もし迅速なコンテナ通関を望むのであるならば、産業界はこれまでの考え方を変える必要がある。
②
規則案導入により同関税庁には大量のmanifest情報が提出されることになるが、関税庁はそれらの情報を迅速に分析・処理する能力が充分ある。
③
寄せられたコメントの中には、規則実施を1年遅らせてほしいとの要望もあるが、関税庁は今すぐ規則を実施しても対応は可能である。
④
規則案は早急に実施したいと考えているが、4週間かけてパブリックコメントを分析し、その後コメントへのresponseを作成する予定。(コメント提出期限の9月9日をから4週間後とは10月第二週になる)。
以上