◆サプライチェーン・セキュリティ対策
  米国関税局の新たなセキュリティスキーム(C-TPATとCSIについて)
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米国関税庁のファイナル・ルール
2002/11/05

 米国関税局は10月31日付け米国官報Federal Registerで、外国港での積込み24時間前までに海上コンテナ貨物のマニフェスト情報を事前申告することを定めたファイナル・ルールを発表しました。
 このファイナル・ルールは、さる8月8日に発表されたプロポーズド・ルールついて寄せられた78のパブリックコメントの内容を勘案して発表されたものです。
 今回のフェデラル・レジスターは、プロポーズド・ルールに対するパブリック・コメントで提起された論点を紹介するとともに、これらコメントに対する米国関税庁の見解を詳細に紹介し、その後でファイナル・ルールを記述しています。

1.プロポーズド・ルールからの主な変更点
 パブリックコメントから大きく内容変更されていませんが、主に下記の点が目立つ変更点です。
バラ積み貨物(Bulk Cargo、Break Bulk Cargo)については、24時間前事前申告用件が免除される。
申告情報に記載される数量単位は、コンテナあるいはパレット単位ではなく、たとえばカートン単位で報告する。
貨物の正確な説明としてHSコードを使用する場合、HS6桁レベルで記述する

2.実施日に対する不明点
 ファイナル・ルールにより「24時間事前申告規則」の施行日(Effective Date)は、2002年12月2日とされております。しかし、施行日以降60日間はいかなる執行行為(Any Enforcement Actions)も発動しない(not initiate)と記述されています。施行日から60日後とは2003年2月1日と推定されますが、「2月1日」という具体的な記述はフェデラル・レジスターのどこにもありません。12月2日の施行日(Effective Date)以降、執行開始日(Enforcement、2月1日と推定される)までの60日間の取り扱いはどのようになるのか明確ではありません。
執行行為(Enforcement Action)について、「詐欺的でない違反についての罰則評価等いかなる執行行為も発動しない」と例示しているのみで、Enforcementが違反の罰則適用のことだけを示唆しているのか不明瞭です。他方、米国関税庁は電子申告されたマニフェスト情報をただちに受け付ける用意ができているとも述べています。[1] したがって、不明点を図示すると以下の囲みのとおりとなります。また、12月2日の施行日は、米国税関が事前申告の受付けを開始する日なのか、この日、外国港を出港する船を対象とするのか、米国港へ到着する船を対象としているのか(この可能性は低いと思われますが)が不明確です。

12月2日 : 施行日 (Effective Date)
(不明点)
  • この60日間は、まったくの移行準備期間として、従来通りの貨物申告が許されるのか。
  • 罰則適用がないだけないだけで、12月2日から事前申告はしなければならない?
60日後(2月1日と推定)Enforcement開始日
この日以降、必ず事前申告しなければならない。申告上の記載ミスなどがあった場合には罰則が適用される。また24時間前事前申告がなされなかった場合、米国港で積み下ろし許可が遅れるあるいは許可されない。

 なお下記でFederal Registerの抄訳を掲載いたしますが、正しくは添付のFederal Registerをご参照下さい。(下線部分及び見え消しによる訂正線は、プロポーズド・ルールからの変更を示しております。なお最終規則の部分のみを訳出しており、パブリック・コメントについての議論の部分は訳出しておりません。)

(10月31日付けファイナル・ルールの抄訳)
Federal Register/Vol.67, No. 211/Thursday, October 31, 2002/Final Rule/ 66318-66333

Department of the Treasury Customs Service
19 CFR Parts 4,113 and 178

Presentation of Vessel Cargo Declaration to Customs Before Cargo is Laden Aboard Vessel at Foreign Port for Transport to the United States.

施行日(Effective Date): 2002年12月2日

PART 4-VESSELS IN FOREIGN AND DOMESTIC TRADES
§4.7 Inward foreign manifest; production on demand; contents and form, advance filing of cargo declaration.
 (b)(2)米国本セクションのパラグラフ(b)(4)で記述されているようにバラ積み貨物(Bulk Cargo 、Break Bulk Cargo)を専門に輸送する船舶を除いて、すべての船社から積荷の貨物申告情報(the vessel’s Declaration)を、税関様式1302または税関が様式1302と同等であると許可した電子書式でVessel Automated Manifest System)に接続している船社は、当該貨物申告情報を電子申告することが求められる。

 (3)(ⅰ)非船舶運行業者(NVOCC:Non Vessel Operating Common Carrier)が、外国港湾で船積みするために船社(Vessel carrier)へ貨物を渡している場合、当該NVOCCが米国連邦海事委員会(FMC:Federal Maritime Commission)からライセンスを受け、§113.64で定められている規定を含むInternational Carrier Bondを所有している場合には、AMSを利用して直接貨物マニもし自動化されているならばAMSを利用して、完全に開示・提示しなければならない。

 (ⅱ)NVOCC(非船舶運行業者)とは、海上輸送を行う船舶を運航させていないコモン・キャリアのことであり、キャリアとの関係では荷主になる。NVOCCは外国のフォワーダーを含むものではない。

(4)本セクション・パラグラフ(b)(4)(ⅰ)で特定されているバラ積み貨物および本セクション・パラグラフ(b)(4)(ⅱ)で規定される範疇に入るブレークバルク貨物のキャリアは、本セクション(b)(2)で提示されている要件(外国港での積込みの24時間前事前申告)を免除される。本セクション(b)(2)で規定される事前申告要件から免除されているバルク貨物あるいはブレークバルク貨物のキャリアは、AMSプログラム参加者である場合米国港到着24時間前までに、自動化されていないキャリアの場合到着後直ちに、貨物申告情報を提出しなければならない。かかるキャリアであっても、コンテナに積み込まれた貨物あるいは本規定の範疇外のブレークバルク貨物については、外国港での積込み24時間前までに申告しなければならない。

(ⅰ) キャリアは、当該キャリアが輸送するバルク貨物について本セクション・パラグラフ(b)(2)に規定される申告要件から免除される。バルク貨物とは本セクションの目的に照らして以下の通り定義される。すなわち、一種類の貨物で、緩い包装のまま積み込まれ(Stowed loose in the hold)、箱(box)、壜・缶(bale)、袋(bag)、樽(cask)等いかなる容器にも梱包されていないもの。かかる貨物はまたバルク・フレイト(Bulk freight)とも記述される。バルク貨物の詳細は下記のいずれかにあたるものである。

(A)油、穀物、石炭、鉱石などの流し込める物質(Free Flowing articles)で、ポンプで汲み上げられる、あるいはシューターで流し込める、あるいは落とし込み(dumping)によって取り扱えるもの、または、

(B)れんが、銑鉄、木材、鋼材など機械的な取り扱いを必要とするもの

(ⅱ)ブレーク・バルク貨物のキャリアは、輸送することになっているブレーク・バルク貨物について本セクション・パラグラフ(b)(2)の事前申告要件からの免除を申請できる。本セクションの目的に照らして、ブレーク・バルク貨物とは、コンテナ化されていないが、他の形での梱包あるいは束ねられた貨物のことである。

(A)免除申請するためには、キャリアは文書で米国関税庁、ナショナルターゲッティング・センター、1300 Pennsylvania Ave., NW., Washington, DC 20229、へ申請しなければならない。免除が与えられるまで、キャリアは本セクション・パラグラフ(b)(2)で規定されている24時間前事前申告要件を遵守しなければならない。免除適用のための文書申請は、何らかのセキュリティ上の懸念が存在するか否か関税庁が評価できるような情報を明確に開示するものでなければならない。すなわち:キャリアのIRS番号;船積みされている商品の包装あるいは束ねている方法、出所(source)、身元(identity);外国及び国内両方の寄港地;キャリアがブレーク・バルク貨物の輸送に使用する船舶の番号、船舶名、IMO番号;当該キャリアの輸入者と荷主のリストで、C-TPAT参加者を確認できるもの。

(B)関税庁は、個々の免除申請をケース・バイ・ケースで評価する。関税庁が、文書で、ブレーク・バルク・キャリアに免除を認めた場合には、免除は、申請書で明確に開示された条件にのみ適用される。もしこうした条件に変更が生じた場合は、あらためて免除申請することが必要になる。

(C)関税庁は、キャリアに対して与えた免除をいつでも無効にできる。

*   *   *   *   *

 (e)マニフェスト情報提供に係る誤り:罰則/清算上の損害(liquidated damage)。本セクションに基づき求められているマニフェスト情報を提出しなかった船長(Master)、あるいは、偽造(forged)、改変(altered)、または虚偽(false)の情報を提出した船長は、他の法規定に定められている罰則に加え、19 USC 1436で規定される民事罰を科される可能性がある。パラグラフ(b)(3)(ⅱ)で定義されているNVOCCが、貨物マニフェスト情報を電子的に米国税関へ申告する方法を選択した場合で、規定で定められた仕方で申告しなかった場合、あるいはパラグラフ(b)(3)(ⅰ)で求められている時間内に申告しなかった場合、あるいは、偽造(forged)、改変(altered)、または虚偽(false)のドキュメント、文書、マニフェスト、データを電子的に米国税関に送信した場合、かかるNVOCCは、セクション113.64(c)で定められている清算損害(liquidated damage)に対する責任を問われる可能性がある。

§4.7a Inward foreign manifest; information required; alternative forms.

*   *   *   *   *

 (c)貨物申告(Cargo Declaration).(1)貨物申告(税関様式1302または税関が様式1302と同等であると許可した電子書式)は、積み下ろしされる米国港湾がどこであろうと、積み込まれている全ての輸入貨物(Inward Cargo)をリストしなければならない。また、当該船舶に積載されている空のコンテナ、並びに米国で荷降ろしされない貨物(FROB:foreign cargo remaining on board)を全て別にリストしなければならない。本パートの目的において、”FROB”とは、外国港で積込まれ、外国港で荷降ろしされることになっており、且つ、一度あるいはそれ以上、直接あるいは間接的に米国港に寄港する船の船内に留まる貨物を意味する。*   *   *

*   *   *   *   *

(4)本セクションのパラグラフ(c)(1)- (c)(3)で求められている貨物マニフェスト情報(税関様式1302または税関が様式1302と同等であると許可した電子書式)に加えて、全ての輸入貨物について下記の内容を記述しなければならない。
(ⅰ)
米国向け船舶が出港した最後の港
(ⅱ)
キャリア・コード(SCAC)(個々のキャリアに対して附与されたユニークなStandard Carrier Alpha Code;本セクション(C)(2)(iii)を参照)
(ⅲ)
キャリアに賦与された航海番号(The Carrier-assigned Voyage number)
(ⅳ)
最初の米国寄港地への予定到着日
(ⅴ)
当該船舶(キャリア)のB/Lの番号と数量(Master B/LかHouse B/Lのいずれか適用できる方)(このことは下記のことを意味する。すなわち、キャリアは外部梱包(external packing unit)の最小単位での数量を伝えなければならない;たとえば、一個のコンテナに200個のカートンを積んだ10のパレットが積み込まれている場合、200カートンと申告されなければならない)
(ⅵ)
米国行き外国キャリアが最初に貨物を受け取る港名
(ⅶ)
貨物の正確な説明(または、荷主から提供されているならば、貨物が分類されている6桁レベルのHSコード)と重量、または、シールされたコンテナについては、荷主が申告する貨物の説明と重量。”freight all kinds(FAK)"、"general Cargo"、"said to contain(STC)"等の総称的な説明は認められない。
(ⅷ)
B/L記載の荷主の完全な名前と住所、あるいはID番号(ID番号は、将来Automated Commercial Environment実施に際して米国関税庁より附与されるユニークな番号。)
(ⅸ)
B/L記載の荷受人の名前と住所、あるいは所有者の代表者名と住所、あるいはID番号(ID番号は、将来Automated Commercial Environment実施に際して米国関税庁より附与されるユニークな番号。)
(ⅹ)
実際の積載数量とB/L記載の数量が異なることを通知すること(キャリアが、シールされたコンテナの積荷数量の検証を求められていない場合を除く)。
船舶名、ドキュメントが作成された国、および公式船舶番号(船舶番号とは、船舶に附与されたIMO番号[2]
(ⅺ)
船舶名、ナショナルフラッグ、船舶番号(Vessel Number)
(ⅻ)
(ⅺ)貨物の積み込みが行われた外国港名
(xiii)
(ⅻ) 国際的に認識された危険物質コード(コンテナに積込まれていた場合)
(xiv)
(xiii) コンテナ番号(コンテナ出荷の場合)
(xv)
(xiv) コンテナに添付されているシール番号

*   *   *   *   *

 (f)マニフェスト情報提供に係る誤り:罰則/清算上の損害(liquidated damage)。本セクションに基づき求められているマニフェスト情報を提出しなかった船長(Master)、あるいは、偽造(forged)、改変(altered)、または虚偽(false)の情報を提出した船長は、他の法規定に定められている罰則に加え、19 USC 1436で規定される民事罰を科される可能性がある。パラグラフ(b)(3)(ⅱ)で定義されているNVOCCが、貨物マニフェスト情報を電子的に米国税関へ申告する方法を選択した場合で、規定で定められた仕方で申告しなかった場合、あるいはパラグラフ(b)(3)(ⅰ)で求められている時間内に申告しなかった場合、あるいは、偽造(forged)、改変(altered)、または虚偽(false)のドキュメント、文書、マニフェスト、データを電子的に米国税関に送信した場合、かかるNVOCCは、セクション113.64(c)で定められている清算損害(liquidated damage)に対する責任を問われる可能性がある。

§4.8 Preliminary entry

*   *   *   *   *

(b)要件と条件。

*   *   *船舶到着による予備登録(Preliminary vessel entry)の税関による供与は、全ての書類の電子的申告あるいはそれ以外の申告方法による提出と税関による受領が条件とされ、(申告内容は)セクション4.7で規定されているマニフェスト情報を完全に含んでいるものでなければならない。

到着前の予備登録を求める船舶は、税関様式1302(貨物申告:Cargo Declaration)と同等と認められるものを、§4.7(b)の仕方に従って、船舶に積載されている全ての貨物を電子的に税関に開示し、税関様式3171を到着の48時間前までに電子的に提出する。

*   *   *   *   *

§4.30 Permits and special licenses for unlading and lading

*   *   *   *   *

 (n)(1)米国税関は、§4.7(b)で定められている貨物申告情報を受け取るまでは、積み下ろし許可を発行しない。米国税関が§4.7(b)で定められているフォーマット等で、外国港での貨物の積み込みの24時間前に、キャリアあるいはNVOCCから完全な貨物マニフェスト情報を受け取れない場合には、米国税関は、全ての必要とされる情報を受け取るまで、貨物全部について積み下ろし許可の発行を遅らせることもある。米国税関はまた、外国港での貨物積み込みの24時間前までに貨物申告情報を受け取れ無かった場合、特定の貨物の積み下ろし許可の発行を保留(Reluctant)することもある。さらに、キャリアが事前貨物マニフェスト情報を§4.7(b)(2)で定められた仕方に従って電子的に申告しなかった場合、§4.8(b)で規定されている予備登録は拒否されることになる。

 (2) §4.7(b)(2)の規定に係る船舶に係る貨物マニフェスト情報の事前提出は紙のフォームで作成されてもよいし、米国税関が認めるEDIシステムによって電子的に送信してもよいが、電子貨物マニフェストの申告は、荷降ろし許可がより迅速に発行される。

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[1] 10月31日付けFederal Register ページ6632左側コラム、上から13行目以降の2つのパラグラフによる記述、あるいは同ページ66327-66328のパラグラフ参照。
[2] IMO:International Maritime Organization、国連国際海事機構

以上


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