米国の24時間ルール等輸送セキュリティ・プログラムに対するEUの対応と取り組みについて、当組合ブラッセル事務所より以下のとおり報告がありました。
(下記報告は、10月31日~11月6日の間に取り纏められたものです)
なお、ご参考までにブラッセル事務所の報告英語原文は右をクリックして下さい。→
BXLreport.pdf(20KB)
(1)欧州委員会税制・関税同盟総局(DGTAXUD:European Commission、Directorate General for Taxation and Customs)の担当官によれば、
- 欧州委員会と米国税関当局は、欧米税関強力協定の拡大について合意間近であり、11月5日には、The Decision of EU-US Joint Customs Cooperation Committee(以下Decision)ドラフトの最終的なワーディングの合意に取り組むことになる。
- このDecisionでは、情報交換の原則を確定することになるが、詳細については、Decisionについて合意された後に設置されることになっている技術ワーキング・グループでの作業が必要になる。
- Decisionは、EU・米の双方での内部手続が完了した後、12月下旬あるいは2004年1月中に採択される見通しであり、技術的な詳細は2004年中に作業を完了する見通し。
(2)EUの24時間ルールに対するスタンス
- EUは24時間ルールのような事前申告ルールの必要性については同意している。
- しかしながら、EUが望ましいと考えている事前申告ルールは、米国方式(輸出者が輸出国税関(EU加盟国税関)を通じることなく輸入国税関(米国税関)に直接申告する)ではない。(EUでは、加盟国から米国へ輸出される場合、事前申告を輸出地である域内税関に申告し、当該税関を通じて米国側へ事前申告する方式を検討している。後述)。しかし、現状ではEUが望ましいと考える方式を取りえないことも認識している。欧州加盟国それぞれのITシステムは相互に互換性がなく共通のインターフェースが無いため、加盟国税関間でのデータ通信に問題を抱えているからである。
- EUの事前申告ルール案(COM(2003)452)と米国の24時間ルールとの最大の相違点は、米国の24時間ルールが、輸出国の港での貨物積込24時間前のマニフェスト情報の事前申告を求めているのに対し、EU案は、(輸入国への)到着の24時間前の申告を求めている点にある。すなわち、EUの事前申告ルール案の下では、企業は米国24時間ルールよりもかなり遅く申告することになるであろう。
- 米国24時間ルールが欧州企業の物流に深刻な影響をもたらすのではないかと欧州委員会は当初懸念していたものの、現状では欧州企業は米国ルールにうまく対応していると感じていることから、24時間ルールの変更を米国に求める意向は持っていない。(欧州企業は、例えば、これまでよりも早く積出港に貨物を搬入し、また、より早い段階で申告情報を準備するということによって対応している)。
(事務局注:欧州委員会は、欧州企業がうまく対応していると感じているようであるが、リードタイムが延びているのは日本と同様である)
(3)税関相互接続レジーム
- 欧州委員会と米国税関当局との協議は次の2点に焦点を当てている。①セキュリティ目的での税関相互接続システムの達成(Customs to Customs exchange for security reasons)、②2国間協力協定とイニシアティブをEU-米協力(EU-US cooperation)に置き換える。
- 欧州委員会の最終目標とは、EU域内企業がセキュリティ情報を域内税関に申告し、当該税関がセキュリティ情報を求めている第三国(例えば米国税関当局)に申告するというものである。
- これについて、エクスプレス配送サービス業者等一部業者に、輸出者と輸入国税関との間に域内税関という行政当局が追加的に関与することは、より早い段階で申告データを用意しなければならないという負担を生み出すだけのことになるのではないかとの懸念を生じさせている。
- この懸念は次の事実によるものである。
- EU各加盟国はそれぞれ独自のITシステムと手続を有している。
- 加盟国が全て、「税関相互接続」を信じているわけではない。
- 当組合ブラッセル事務所がコンタクトした欧州委員会担当者は以下の通りの認識を持っている。
- 現状における困難とは、情報交換可能なシングルEUシステムが欠落していること。
- セキュリティと貿易円滑化のバランスを図らなければならないこと。
- シングルEUシステムの開発努力は現在行なわれているが、完全稼動にはまだ長い時間を要する。現在、全ての税関を接続するネットワーク(CCN/CSI)は存在し、トランジット手続きに利用されている(NCTS:New Computerized Transit System)ものの、完璧に配置されているわけではない。欧州委員会が、同ネットワークを他の情報交換(例えば、第三国当局との情報交換)にも使用されるべきであると考えるのはもっともであり、輸出手続自動化目的でCCN/CSIネットワークを利用しようとするパイロット・プログラムが進行中である。しかしながら、CCN/CSIネットワークは加盟国の国内システムに置換わっておらず、またそれぞれの国内システムとリンクし続けているため、同システムの操作を極めて複雑なものにしている。
(4)港湾での貨物検査
- 港湾での貨物検査について、欧州委員会はEU-米の傘の下での協力システムを設置することを求めている。これの第一フェーズとは、EU-US税関協力アグリーメントの拡大する決定となる(前述)。しかし、実際の詳細はなお、テクニカル・ワーキング・グループの作業を待たなければならない。
(5)カナダ、オーストラリア
- カナダ及びオーストラリアも、事前申告制度の準備を進めている。
- カナダ:2004年4月1日から、ACIシステム(Advanced Commercial Information)が運用開始され、またセキュリティ情報のためのWCOデータモデルを採用する可能性がある。
(事務局注:WCOのデータセットは右をご参照下さい → http://www.wcoomd.org/ie/En/en.html)
以上