韓国における貿易・投資上の問題点と要望
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本表の見方 |
17. 知的財産制度運用 |
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経由団体※ |
問題点 |
問題点の内容、国際経済法上・二国間協定上の解釈 |
要望 |
準拠法、規則、運用 |
日機輸 |
(1) 特許間接侵害成立要件の厳格 | ・現在の韓国特許法によると、間接侵害の成立要件として、「専用性」(特許発明品の生産のみに使用される物(物の発明の場合)、または特許発明の方法のみに使用される物(方法発明の場合)であること)が要求され(韓国特許法127条)、かつ、権利者がその立証責任を負っている。しかし、専用性は、他の用途が「存在しない」という「不存在」の事実を立証することであるので、立証することが難しい場合が多い。また、特許発明の侵害に使用されることを知りながら生産・譲渡等した場合でも、その物に専用性が認められないときには、権利行使ができない。 | ・専用性がない場合であっても、侵害者が悪意をもって(特許侵害に使用されることを知りながら)生産・譲渡等した場合であれば、間接侵害と認めてほしい。 | ・特許法第127条(侵害とみなす行為) |
日機輸 |
(2) 特許侵害行為に対する権利者の立証責任の不合理 | ・侵害行為を立証または否認するための証拠は被疑侵害者が持っている場合が多いにも関わらず、その立証責任は専ら権利者が負わされているため、権利者に対する充分な保護が行われていない。 | ・権利者が被疑侵害者による侵害を一定の範囲で立証すべきであることを前提として、そのうえで被疑侵害者が自分の侵害行為を否認するためには、被疑侵害者自らが具体的実施態様を明示しなければならないようにしてほしい。 | ・特許法 ・民事訴訟法 |
日機輸 |
(3) 輸出に対する特許権の権利行使の困難 | ・現在の特許法によると、「輸出」は実施行為に該当しない(韓国特許法2条)。したがって、水際において「輸出」される段階で模倣品等が発見されても、その前段階においての製造、譲渡等を立証しない限り、それに対する権利行使ができない。 また、韓国貿易委員会(KTC)を通じて、輸出禁止を求めることはできるが、それは裁判所(法院)を通じての禁止ではないので、KTCでは損害賠償の請求はできない。 |
・「輸出」を特許法2条に「実施行為」として追加してほしい。 | ・韓国特許法2条 |
日機輸 |
(4) 特許権の権利範囲の解釈に関する明細書参酌規定の不在 | ・韓国法院の判例を総合的に検討してみると、特許権の権利範囲は、特許請求の範囲に記載されている事項を基礎としながら、(特許請求の範囲の記載だけではその技術的な意味を明確に理解できない場合が多いので)その技術的な意味を明確に把握するために明細書の記載を参酌することができる(ただし、明細書の参酌による解釈が、特許請求の範囲に基づく解釈に反してはならない)と理解される。それにもかかわらず、韓国特許法には、「特許発明の保護範囲は請求の範囲に書いてある事項により決められる」という規定だけが存在し(韓国特許法97条)、明細書参酌に関する規定は存在しないので、その法理が誤解される場合が多い。 | ・特許権利範囲の解釈において、明細書を参酌することができるとの点を法律上に定義する。 | ・韓国特許法97条 |
日機輸 |
(5) 通常実施権の登録要件の不都合 | ・韓国特許法118条1項によると、通常実施権は、登録しないと第三者に対抗することができない。しかし、open-innovationで通常実施権の許諾が頻繁に使われる現状を考慮すると、それらをいちいち登録し、管理することを求めるのは、企業らには非常に負担になる。また実施許諾契約は、条件はもちろんのこと、その存在自体も秘密であることが多く、登録することによって公になるのは好ましくない。 | ・通常実施権を登録しなくとも第三者に対抗できるようにしてほしい。 | ・韓国特許法118条1項 |
日機輸 |
(6) 特許侵害訴訟での無効事由判断可能の立法化の必要 | ・韓国大法院の判決(2012.1.19.言い渡し2010ダ95390号)により、無効になることが明らかな特許権に基づいて権利行使をするのは権利濫用に該当し、そのような権利行使は認められないとして、裁判所(法院)が侵害訴訟でそのような特許の無効事由を判断することができることが明らかになった。しかし、その内容は、まだ法律上には定められていないため、立法化を通じて、裏付けられるようにしたほうがいいと思われる。 | ・侵害訴訟において、無効になることが明らかな特許権に基づいて権利行使をするのは認められず、裁判所(法院)は侵害訴訟において特許の無効事由を判断することができる旨を特許法に明確に定めてほしい。 | ・韓国特許法 |
日機輸 |
(7) コンピュータプログラム発明の特許保護対象の限定 | ・2014年改正審査基準により、「コンピュータプログラム」を発明の対象として記載することができるようになったが、「ハードウェアと結合して媒体に保存された」との限定を請求の範囲に記載することが求められる。即ち、媒体に保存されたプログラムだけが特許の保護対象になり、プログラム自体だけでは特許の保護対象になれないと理解される。しかし、相当数のプログラムが媒体ではなくオンラインを通じて流通、伝送されている実情を考慮すると、現在の制度ではプログラム発明を充分に保護することができない。 | ・プログラム発明が特許の保護対象になるように、プログラム発明を発明の一種類として定義してほしい(韓国特許法第2条3号)。 | ・韓国特許法第2条3号 |
製薬協 |
(8) 不合理な医薬品特許権の延長期間 | ・新薬の許可手続等に必要な期間について、特許権の存続期間を延長する制度が設けられている。 韓国特許庁では、「食品医薬品安全処長の承認を得て実施した臨床試験期間と食品医薬安全処で必要とされた許可申請関連書類の検討期間を合わせた期間」を当該許可等に必要な期間としている。 そのため、新薬の許可等手続において、外国での臨床試験結果を韓国食品医薬品安全処(MFDS)に提出し、MFDSが当該新薬の許可等のために当該資料を参酌した場合であっても、当該外国での臨床試験期間は、新薬の許可手続等に必要な期間として認められておらず、韓国で認められた延長期間は、日米欧で認められた延長期間と比較して短い。 ・オリジナル医薬と同じ有効成分(活性本体)であって、塩のみが異なる医薬品(塩変更医薬品)の品目許可申請に提出する資料は、オリジナル医薬の品目許可申請資料に依拠することにより大幅な省略が許容されている。オリジナル医薬を上市するためには臨床試験実施に長い開発期間と莫大な費用を要するのに対して、塩変更医薬品の場合は短い開発期間と最小限の費用で品目許可を得ることができる。 韓国特許法院では、オリジナル医薬の延長された特許権の効力が、塩変更医薬品に及ばないと判断されている。オリジナル医薬の有効性および安全性の試験データに依拠した塩変更医薬品に延長特許権の効力が及ばないというのであれば、塩変更医薬品の製造販売許可を受けようとする者に、新規許可申請としてしかるべき臨床試験実施に基づく有効性および安全性データの提出を課さなければ公平を欠く。 |
・MFDSが新薬許可のために参酌した臨床試験については、海外で実施されたものであっても、その臨床試験期間を特許権の存続期間延長の算定に加入するよう要望する。 ・塩変更医薬品が延長された特許権の効力範囲に入るよう特許法95条を解釈して頂きたい。或いは、塩変更医薬品について、オリジナル医薬のデータにフリーライドせず、臨床試験に基づく有効性と安全性の確認を求める医薬品許可制度としていただきたい。 |
・韓国特許法92条 ・特許庁告示第2012-17号 ・韓国特許法95条 ・特許法院第3部2017.06.30言渡判決(2016ホ8636権利範囲確認(特)、2016ホ9189(併合)権利範囲確認(特)及び2016ナ1929特許権侵害差止) |
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