中国における貿易・投資上の問題点と要望
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本表の見方 |
24. 法制度の未整備、突然の変更 |
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経由団体※ |
問題点 |
問題点の内容、国際経済法上・二国間協定上の解釈 |
要望 |
準拠法、規則、運用 |
フル工 医機連 建産協 自動部品 日機輸 |
(1) 法制度・規則の頻繁な突然の変更 | ・CFDA(食品薬品監督管理局)による医療機器業関連方案が矢継ぎ早に発効される。 ・外国人就労許可のパイロット政策の実施が開始された。改正のポイントは高級人材(A類)の流入を奨励し、一般的な人材(B類)の流入をコントロールし、上記以外の人材(C類)の流入を制限すること。2017年4月1日開始ですが、実務運用が見えておらず(実務窓口にまだ情報がない)、今後の赴任者の選定にも影響を与える可能性がある。 ・法制度・規則の突然変更により、経営環境が急変し、企業は対応に困ることがある。たとえば、2016年の9月21日に中国交通輸送部、信息化部、公安部、工商総局と質検総局により「超限超載認定基準」を発行し、輸送車両の規格(特に高さと長さ)と最大積載量を定めた。 影響として、国際共通40HQコンテナ車は規格違反(高さ)と認定され、一時的に使用不可となった。 ・安全対応措置について、安全監督局が突然来訪して、2016年9月公布、2017年3月から展開となる粉塵防爆法規に対する確認が実施された。 結果として、集塵機等が法規に対して不適合となり、法規を満足できるよう改善の指示を受けた。 ・特に環境規制等の急激な変更で地方政府の知識・理解が乏しく拡大解釈による必要以上の処理設備導入や操業停止のリスクがある。 例:VOC規制:有機溶剤が対象とみられるが水溶性塗装も規制される。また、国際会議開催に絡む操業停止の指示がある。 ・しなくてもよいと明記された法律文書が廃止された理由で義務が課されるような適用方法をやめて欲しい。文書で明記して欲しい。 (例:外国人 国外での保険料を所得に合算、税務申告) |
・当該所轄広報への掲載だけでなく、公共放送で広く積極的に通知して欲しい。 ・新税制導入、税制や税率変更に際しては、外資企業に対話機会を提供するとともに、十分かつ妥当な説明を実施するなど透明性を確保して頂きたい。 ・条例発信前、業界に対する影響度、実施方法などについてきちんと検討していただきたい。 ・また業界に影響度の高いと見込まれる条例発行の際、企業に対してバッファ期間を与える。 ・中国では事件が起きた後、その地区だけに再発防止で超法規的な措置がでる。 法規を超えた行政措置になっている。 ・規制導入時には各関係機関への説明と明確な規制値を提示頂くなど、十分な準備期間を設けて導入頂きたい。 ・文書にて改訂、明記して欲しい。 |
・蘇環局[2014]128号 ・SFDA認証 ・CCC認証 ・外国人来華工作許可制度パイロット実施法案 |
日商 日鉄連 |
(2) 法律の実施・運用の地域格差・不統一 | ・関税、外国送金、資本出資などの運用において、東北省など地方と上海地域とで、解釈の違いがあり、事業上、その情報把握に苦慮している。 ・例:営業税から増値税に変更するにあたり、海外売上100%のコンサルティングサービスに対しては免税との規定がある。この規定の運用が地域毎に違い、ある地域では免税とされていたものが、突如免税不可となり、遡及して納税するよう求められた。 |
・法規制解釈の標準化。 ・制度運用の透明化。 |
・中国法制 |
日機輸 日鉄連 |
(3) 法律の実施運用規則の不備・発効遅延 | ・上位の法規制が発効しているにもかかわらず、その法律を実際に運用するための下位規則、規制物質リスト、ガイドライン等が公表されるのが遅く、実際の対応が困難。ガイドライン等が出揃って改善されたが、その他は改善されていない。 ・遵守すべき内容・規則として法令・通達がよりどころとなるが、全国での当局の運用を顧みた際に必ずしも運用ルールが文書化されておらず、そのことが全国対応を行う多国籍企業にとっては不便につながることが存在する。いまだに改善されないケースがある。 例えば、2016年9月に杭州に開催されたG20に関する杭州周辺の物流制限について、8月末になっても政府から明確な制限情報が出ておらず、企業間情報交換、もしくは物流業者から非正式な情報を頼らざるを得ない状況になった。物流業務の不安要素となった。 ・中国のWTO加盟時の「約束」に関するうち、「(国内)流通業の自由化」(外資の出資制限の廃止、地域制限・出資者資格要件の東南アジアの廃止)については、2004年6月に「外商投資商業分野管理法」が施行され、表向きは「開放」されたように見えるが、実施細則が規定されておらず、事実上閉鎖されたまま。 ・ネットワーク安全法について、「重要情報インフラ運営者」や「重要データ」等の範囲が不明瞭なまま法施行されており、外資系企業が中国国内の顧客から収集した具体的データにつき、中国国内で保存する義務があるか判断できない。この義務が幅広く適用されると、外資系企業には事実上の制約となる。 |
・下位規則やガイド等の準備をしてから法律を発効して欲しい。(準備が出来るまでは発効しないで欲しい。) ・運用を行う際に、迅速かつ明確な基準・考え方の発信を行う体制を徹底いただきたい。 ・実施細則の制定による実質的な開放。 ・「重要情報インフラ運営者」や「重要データ」等の範囲を法文で明確にし、その解釈の仕方について、十分かつ妥当な説明を実施するなど透明性を確保して頂きたい。 |
・网?安全法(ネットワーク安全法) ・重要情報インフラ運営者に関する安全保護条例(意見募集稿)第18条 ・中華人民共和国環境保護税法 ・危険化学品安全管理条例 ・危険化学品登記管理弁法 |
(参考) ・中国国務院は2017年12月25日付で「中華人民共和国環境保護税法実施条例」(2018年1月1日から施行された「中華人民共和国環境保護税法」の実施細則を発布。 |
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(対応) ・2017年5月2日、中国の国家インターネット情報弁公室は、「インターネット製品及びサービス安全審査弁法(試行)」を公布した。審査弁法は、「インターネット安全法」1(2016年11月7日公布)に関して初めて制定された付属法令として、2017年6月1日に「インターネット安全法」と共に施行された。同法は、「インターネット安全法」にいう「安全審査」について、ある程度、具体的に規定するものである。 |
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日製紙 |
(4) 現状と乖離している法律法規及び通達 | ・実務上対応できない法律法規がたくさんある。 残業に関する法律について、中国の労働法は残業時間上限を1日1時間、1ヶ月36時間と定めているが、ほとんど守られておらず、非現実的な規定である。 |
・実行性のある法律法規に修正して欲しい。 | ・中華人民共和国労働法第41条 ・中国 人社部発〔2014〕78号通達 |
JEITA 医機連 日機輸 |
(5) 基準・法律等の公布から施行までの期間不足 | ・株式取引に関する規制が即日発効となるため、対応に苦慮。 ・「医療機器取扱説明書とラベル管理規定」の法改正や、製品登録番号の変更等、製品包材・取扱説明書等における必要記載事項の内容変更について、その決定(通知)から施行までの(準備)期間が短いため、各工場における変更への対応が間に合わない。 ・基準・法律等の新規策定・改正により、製品の仕様や設計、材料等に大きな変更を加えなければならないことがある。このような場合、十分な検討時間が与えられないと、企業にとって大きな負荷・負担となる。 |
・法改正については、一定の猶予期間等の設置とともに外資系企業への十分な事前説明や情報提供を要望したい。 ・同(準備)期間の延長、猶予期間の設定等。 ・基準・法律等の新規策定・改正時には、業界へのインパクトを評価し、製品の仕様や設計、材料等に変更を伴う場合には十分な検討期間を与えていただきたい。 |
・韓国「分離排出法」 ・中国「電子電気製品汚染制御管理弁法」等 ・中国証券監督管理委員会広告[2015]18号「上場企業および監督者の株式保有高率規則」 ・医療機器の取扱説明書とラベル管理規定 |
自動部品 |
(6) 法案策定手続の不透明 | ・政府関係機関による起案が突然廃案となった。 2014年に国家知的産権局から「職務発明条例草案」のパブコメ版が発表された。当該「職務発明条例草案」には、企業にとって非常に不利となる規定が多数含まれていて、職務発明者が企業に対し相当な額の奨励・報酬の支払を求める訴訟・紛争が激増する可能性があることが判明。本社知財部門、法務、現地の顧問弁護士と一緒に草案に対する曙光版の職務発明規定を作成した。しかし、2016年に当局による措置で、この草案は廃案になったことが分かり、この規定策定までに非常に多くの工数がかかった。 |
・政府関係機関は事前にしっかりと起案をして、一般社会に公表した以上、履行をすべき。 中国の場合、多くの法規が沢山でることから、外資企業にとっては選別をすることが非常に厳しいと感じる。 |
・職務発明条例草案 |
フル工 自動部品 日機輸 |
(7) 関連法令の矛盾、関係当局・担当者による法制度解釈の不整合・不統一 | ・消防法等において法文上では曖昧な表現になっており、最終的な法解釈は、消防局の担当者の解釈で運用され、企業としては対策が必要なのか分からない。突然、法律に従っていないとの見解を示され、改善を要求される。また、改善が完了するまで、対象施設の封鎖を要求される。 ・中国法体系全般にいえることだが、法令の不備や法令間の矛盾、またそれに伴う政府下級役人の拡大解釈見解変更が相次ぎ、その度に業務停止、翻弄されている。 例:CIE/CIES二社統合手続では、関連法令の不備、政府役人の法令拡大解釈、見解変更が相次いだ。 |
・法律の明確化を実施し、末端の組織まで認識を統一して欲しい。 ・是正勧告に対する改善に一定期間の猶予が欲しい。 ・中国政府高官に政府下級役人の見解が介在しない洗練された法体系の整備を訴えて欲しい。 |
・環境規制 ・消防法等 |
日機輸 |
(8) 行政規制簡素化 | ・「自由貿易港」とか外資自由貿易区に所在の外資商貿公司が行う三国貿易且つ最終目的地が中国大陸企業となる取引における政策の透明化、簡素化と規制の緩和または撤廃を求める。 | ||
日化協 |
(9) 不明な許可制度 | ・化学製品の製造に対して「生産許可」が製造サイト毎に必要との情報があるが、環境アセスメント等の評価用費用内訳や所管省庁が不明。 | ・許可制度の中国国内での整備・標準化及び透明化の促進。 | |
日商 |
(10) 外資民間プロジェクトの入札要件の地域間不統一 | ・入札法では、入札が必要となる工事の範囲を省政府レベルで決定することになっている。このため、外資民間プロジェクト(日系民間工事)についても、入札不要とされる地域と入札が必要とされる地域が存在する。必要とされる地域では、法規に則った入札手続実施が必要となるため、発注者の意向に沿わない業者選定リスクが有る他、費用・時闘が掛かっている。 | ・全国統一の基準の明確化を図るとともに手続の簡素化をお願いしたい。 | ・入札法(主席令第21号) ・工事建設プロジェクト入札募集範囲及び規模の標準規定(国家発展計画委員会第3号令) |
日機輸 |
(11) 中国サイバーセキュリティ法制定による企業活動の制限 | ・同法では中国国内の個人情報を国外へ持ち出せないルールとなっており、具体的にどう規制されるのか不明瞭なため、今後の運用によっては企業活動が制限される懸念がある。 グローバル標準のOffice365などの導入に際しては、独自システム構築など特別な対応が必要となる。 |
・本法にかかる当局や他企業の動向のモニタリング、情報収集と共有をお願いしたい。 | ・中国サイバーセキュリティ法 |
(対応) ・日本政府は、2017年3月以降のTBT委員会においても、本法に対する懸念表明を行っている。 |
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