米国における貿易・投資上の問題点と要望
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本表の見方 |
25. 政府調達 |
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経由団体※ |
問題点 |
問題点の内容、国際経済法上・二国間協定上の解釈 |
要望 |
準拠法、規則、運用 |
日鉄連 |
(1) バイアメリカン法による政府調達の内外差別 | ・2009年2月、米国再生・再投資法における鉄鋼等のバイ・アメリカン条項が成立。本法に基づいて実施される政府関連公共事業に使用される鉄鋼製品と一般工業品に米国製品の使用を義務付けている。対象となる公共事業には空港、橋梁、運河、ダム、堤防、パイプライン、鉄道、公共輸送システム、道路、トンネル、港湾、桟橋等の建設、改築、維持・修復が含まれている。WTOの政府調達協定(GPA)加盟国は対象とならないため日本鉄鋼業に直接的な不利益は生じていないが、本制度によって米国市場を締め出された中国等GPA非加盟国の鋼材が第三国へ迂回輸出されることが想定されるため、米国以外の市場での健全な貿易環境維持への間接的な悪影響が懸念される。 ・2017年1月24日、トランプ大統領が「Construction of American Pipelines」という大統領令に署名。商務長官に対して米国内で新規建設、修繕、延長等が行われるパイプラインにおいて米国産材を(国内法)最大限使用する計画を150日以内に大統領に提出することを求めている(2017年8月4日現在、大統領令署名から150日以上が経過しているが、未だ計画が公表されていない)。 鉄鋼製品については、米国内で溶解段階を経て生産されたものが米国産材と定義されており、米国産の半製品を用いて外国で生産されたもの、および外国産の半製品を用いて米国内で生産されたものについては、米国産とならない旨、規定されている。 2017年4月18日、トランプ大統領が「Buy American and Hire American」という大統領に署名。各連邦政府各機関に対して米国製品購入の最大化に向けた方策を大統領令署名から150日以内に検討することを求めている他、商務省とUSTRに対して自由貿?協定(FTA)やWTO政府調達協定がバイ・アメリカン条項実施の障害になっていないかを150日以内に調査することなどを求めている。 |
・WTO政府調達協定に整合的な運用。 | ・バイアメリカン(米国製造部品調達義務):連邦法 ・41 U.S.C. S10a-10d ・Federal Acquisition Regulation(FAR) Part25 & DFARS 225.1(Supplies) and DFARS 225.2(Construction) ・2009年米国復興・再投資法 |
(参考) ・環太平洋パートナーシップ(TPP)協定とは、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国及びベトナムの合計12か国で高い水準の、野心的で、包括的な、バランスの取れた協定を目指し交渉が進められてきた経済連携協定で、2015年10月のアトランタ閣僚会合において大筋合意に至り、2016年2月、ニュージーランドで署名された。日本は2017年1月に国内手続の完了を寄託国であるニュージーランドに通報し、TPP協定を締結した。 その後、2017年1月に米国が離脱を表明。これをを受けて、米国以外の11か国の間で協定の早期発効を目指して協議を行い、2017年11月のダナンでの閣僚会合で11か国によるTPPにつき大筋合意に至り、2018年3月、チリで「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定:CPTPP)」が署名された。現在までに、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア、ベトナムの7か国が国内手続を完了した旨の通報を寄託国ニュージーランドに行っている。 ・2018年12月30日、CPTPPは最初に批准した6カ国(カナダ、オーストラリア、日本、メキシコ、ニュージーランド、シンガポール)の間で発効した。 ・2019年1月14日、ベトナムでCPTPPが発効。 |
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(対応) ・2002年に川崎重工は、バイアメリカン条項を満たすべくネブラスカ州リンカーン市に最新鋭の車両一貫生産工場を新設し米国製比率を向上し、かつ多くの日本メーカーと協力して信頼性と安全性の高い車両を製造して、多数の公共工事で受注を伸ばしている。(2012年3月5日付ジェトロ『通商弘報』) ・2001~2003年、日米規制緩和対話において、WTO政府調達協定の適用を受けていない米国連邦政府調達に関し、バイアメリカン法を撤廃することを要請している。また、地方政府調達についても、内外無差別原則を確立するため、必要な措置を講じることを要請している。 ・2001年10月、改革イニシアチブにおいて、日本政府は米国政府に対し、①連邦、州の規制の二重構造や州毎に異なる規制の改善、②自由化に向けたスケジュールの明示、③公共事業持株会社法(PUHCA)の見直し、④公営事業のあり方について検証して今後の方向性について提言、⑤事業者の予測可能性を配慮した卸市場での上限価格(プライスキャップ)の設定の措置を連邦政府の主導により実施することを要請。 以降、日本政府は、毎年米国政府に対して、連邦・州政府におけるバイ・アメリカン制度の見直し、内外企業に平等な事業機会の確保を要請している。 ・2003年10月1日以降、連邦政府と取引する企業は、すべてCCRデータベースへの基礎情報登録を行い、最低1年に1回情報を更新することが義務付けられた。 ・2004年12月、日本政府は、WTO政府調達協定の適用範囲の拡大交渉において、協定対象外の13州の追加をリクエストしている。 ・2005年12月、日本規制改革イニシアティブの対米要望として、連邦バイアメリカン法に関し、米国企業と外国企業に平等な事業機会を確保することを求めた。 ・2009年2月17日、オバマ大統領は景気対策法と称される2009年米国復興・再投資法(the American Recovery and Reinvestment Act of 2009:H.R.1)に署名した。この法律に、同法により適格又は利用可能となる資金を用いて実施される公共建造物の建設、改築、メンテナンス、修復のプロジェクトに用いられる鉄鋼及び製造物品は米国製(連邦調達規則が適用される場合、ローカルコンテンツ50%以上)であることを義務付ける「バイアメリカン条項」が盛り込まれた。このバイアメリカン条項には、①公共の利益に反する場合、②米国において十分かつ合理的に入手可能な量及び満足のいく質で以て製造されない鉄鋼及び製造品を含む場合、③米国で製造された鉄鋼及び製造品を含むことで総事業コストが25%以上増加する場合の3つの適用例外が設けられており、そのいずれかに該当する場合には、上記米国製品購入義務は適用されない。但し、かかる適用撤回にはその決定を行う関係連邦省庁・機関の長は撤回理由を詳細に書面で連邦官報に公示することとしている。同法はまた、バイアメリカン条項はWTO政府調達協定やFTAなどの「国際協定に基づく米国の義務と整合する方法で適用される」ことになると規定しており、WTO政府調達協定加盟国、FTA締結国、USTRが指定するLDCを適用除外とする運用を原則としている。 ・日本政府は、2009年2月及び5月のWTO政府調達委員会において同法の運用を注視していく旨表明するとともに、同年春、日米規制改革イニシアティブにおいて、政府調達における内外無差別の原則の徹底や、本件を含む保護主義的措置の見直しについて指摘。 ・2010年2月5日、米国・カナダ両国政府は、①カナダ企業を米国復興・再投資法のバイアメリカン条項の適用対象とすること、②WTOのGPAに基づき州レベルの政府調達を相互に永久的に開放することで合意した。さらに2月16日に米国とカナダが締結した二国間政府調達協定が発効したのに対応して、米国はWTOのGPAの付属書を修正してカナダ企業に対して37州の政府調達への参入規制を緩和するとともに、州政府実施の7プログラムへのバイアメリカン条項の適用除外とする。 ・2014年4月6日改正政府調達協定が発効した。米国は、連邦政府の10機関を新たに国際調達の対象に加えた。 ・2016年2月4日、TPP協定(TPP12)が署名され、TPPの政府調達で、米国はテネシー川流域開発公社、ボンネビル電力公社などが新たに開放対象としている。 |
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日機輸 |
(2) 国防調達における外国製品排除 | ・米国政府調達規則上の要求に基づくフローダウンにより、輸出する防衛装備品のQuality Assurance(QA)は、米国防契約管理局(DCMA:Defense Contract Management Agency)が直接日本の現場に乗り込み実施するため、国内のサプライヤの中には対応が困難な企業も存在しうる。 | ・RDP-MOUのAnnexとして相互に自国のQA監査を代替するQA Service MOUを締結していただきたい。 ・また、その為には日本側においてもQAに対応する組織・能力の構築を要する。 |
・Buy-American Act ・Berry Amendment ・RDP-MOU ・QA Service MOU (RDP-MOU Annex) |
日機輸 |
(3) 防衛装備品輸出に対するQuality Assurance(QA)の日本現地での実施 | ・防衛装備品に関し、特殊金属などの供給源の米国内限定・国産化要請は「相互の防衛調達に関する日米間覚書」(RDP-MOU:Reciprocal Defense Procurement-Memorandum of Understanding)(2016年6月4日)の締結により改善され、米国が日本から装備品を輸入する際の法規制が撤廃されることとなった。 問題点としてRDP-MOUに従い輸出する防衛装備品のQuality Assurance(QA)は、米国防契約管理局(DCMA:Defense Contract Management Agency)が直接日本の現場に乗り込み実施するため、対応に多大な労力・時間・コストがかかることとなる。 |
・RDP-MOUのAnnexとして相互に自国のQA監査を代替するQA Service MOUを締結していただきたい。 ・また、その為には日本側においてもQAに対応する組織・能力の構築を要する。 |
・Buy-American Act, ・Berry Amendment ・RDP-MOU ・QA Service MOU (RDP-MOU Annex) |
日機輸 |
(4) 規則の未整備、政府調達 | ・2015年12月、米政府防衛調達要求の「防衛連邦調達規則付属文書」(DFARS:Defense Federal Acquisition Regulations Supplement)が大幅改定され「国立標準技術研究所特別公示」(NIST SP:National Institute of Standards and Technology Special Publication)に規定された情報セキュリティー要求を2017年12月31日までに遵守、または米国防省の米国防省最高情報責任者(CIO:Chief Information Officer)への取組み状況説明と承認取得の必要があるが、CIOの判断基準やその後の工程(要求実施までの猶予期間など)が現状では明示されていない。 | ・2017年12月31日までに遵守できず、米国防省CIOへ状況説明をすることになった場合のCIOの判断基準とその後の工程(猶予期間など)を明示していただきたい。 | ・DFARS 252.204-7012 ・NIST SP800-171 |
日機輸 |
(5) 偽造(偽装)電子部品対策要求 | ・一部の政府調達において、偽造電子部品を扱わない様に努めていることを契約書中に明記するように求められる場合がある。偽造対策の社内体制を構築し、必要に応じて電子部品のサプライチェーンを遡って安全性を確認する必要があるが、どこまでやれば基準に合致するのかが不明確であり、過大な負担となる。 | ・基準の明確化。 ・通常の部品受け入れ検査、製造品質保証体制による要求充足。 |
・米国防省調達規則 ・連邦調達規則 |
日機輸 |
(6) 国産化要請 政府調達 |
・米国政府調達規則上の要求に基づくフローダウンにより、輸出する防衛装備品のQuality Assurance(QA)は、米国防契約管理局(DCMA:Defense Contract Management Agency)が直接日本の現場に乗り込み実施するため、国内のサプライヤの中には対応が困難な企業も存在しうる。 | ・RDP-MOUのAnnexとして相互に自国のQA監査を代替するQA Service MOUを締結していただきたい。 ・また、その為には日本側においてもQAに対応する組織・能力の構築を要する。 |
・Buy-American Act, ・Berry Amendment ・RDP-MOU ・QA Service MOU (RDP-MOU Annex) |
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本表の見方 |