◆2024年 國分理事長年頭所感
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2024年 國分理事長年頭所感

2024年1月4日

 2024年の新春に当たり、謹んでご挨拶申し上げます。

 まず始めに今年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」で多数の尊い人命が犠牲となっていることに対し、深く哀悼の意を表します。また、この一連の地震等で被災されたすべての方々に心よりお見舞いを申し上げるとともに、被災地域の安全の確保と一日も早い復興を衷心よりお祈りいたします。

 さて、昨年は、ここ数年の国際社会の分断が一段と複雑化した年でした。ロシアとウクライナの紛争は2度目の冬を迎え、中東ではハマスがイスラエルに侵攻、いずれも多くの犠牲者を伴いながら戦闘は長期化の様相を呈しています。現状を強く憂慮するとともに戦闘行為が一刻も早く終結し、市民が安心して暮らせるようになることを心から願っております。

 こうした地域紛争に加え、米中関係の冷え込みなどを含む地政学リスクの高まりがサプライチェーンの不安定化という形で顕在化、各国の経済安全保障への意識を高めました。サプライチェーン強靭化に加え、グリーン経済への移行などを背景に、欧米をはじめ一部先進国では産業政策を強化する動きが見られます。

 国内では新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に分類変更され、対面サービスの再開に伴い需要が回復、半導体不足の段階的解消なども相まって生産は復元基調に入っています。失速が懸念されていた海外経済も想定外の堅調さを見せ、2023年度上期における我が国の機械輸出は、金額ベースで前年同期比6.1%の増加となりました。2桁成長であった昨年度に比べ伸び率は鈍化したものの、機械輸出は比較的安定的に推移したと言えます。

 しかしながら、今後は経済安全保障を始め、国際社会の分断に伴うさまざまな制約に一段と神経を使わなければならない展開が想定されます。WTOは、2024年の世界貿易量は3.3%増と高めの見通しを示していますが、「地政学的な緊張に関連した貿易の分断化の兆候が見られる」と警鐘を鳴らしています。海外経済もダウンサイドリスクを抱えており、機械輸出も一定の影響を受ける可能性があります。

 多角的な自由貿易体制のもとで進んだ経済のグローバル化は、世界経済の成長とイノベーションに大きく貢献してきました。我が国の機械輸出もWTOの多国間ルールや二国間・地域間経済連携協定による自由貿易体制の下で大きく飛躍しました。世界経済にとって自由な貿易・投資体制の維持が望ましいことは論を俟ちませんが、国際社会の分断が進み、それを仲裁すべき国際機関が機能を低下させる中、いま我々は新たなリアリティを突き付けられています。変化が読みづらい環境のもと、本邦企業はしたたかに、かつ柔軟に行動していく必要があるでしょう。

 今年は各国で重要な国政選挙が予定されています。1月の台湾総統選挙を皮切りに、2月にはインドネシア大統領選挙、3月にはロシア大統領選挙が続きます。4月から5月にかけてのインド総選挙ではモディ首相が3期目を目指し、6月のEU議会選挙後には欧州委員会委員長が選出されます。そして11月の米国大統領選挙はその結果いかんで同国の外交スタンスを激変させる可能性を孕むもので、最も注目度の高い政治日程です。

 これら選挙の行方次第では国際社会の景色が一変する可能性があり、不透明な国際情勢の下で、産業界にも難しい対応が求められます。我々は自由な貿易・投資体制の維持拡大の原則を追求しつつも、現在のような複雑な国際関係のもとでは参加国の多様性に配慮した経済連携、フレンドショアリングなどの枠組みを通じて、包摂的、かつハイレベルな経済関係を目指していくべきと考えます。

 2050年カーボンニュートラルの達成、環境保護、新エネルギーの確保、格差是正・人権保護など広範な課題に対して、国際的に事業展開している我が国機械産業にも大きな役割が期待されています。これら社会課題に果敢にチャレンジしていくことが、イノベーションを促進し、あらたなビジネスチャンスを創出することになると考えます。

 政府におかれましては、公正な貿易・投資体制を機能させるためのルール作りや、保護主義的な動きに対する絶え間ない牽制など、自由貿易体制の最大限の回復に向けて強力なリーダーシップを発揮していただくと同時に、イノベーション促進など機械輸出の促進、ひいては日本経済の成長の基盤づくりに努めて頂きたいと存じます。

 日本機械輸出組合は「機械の輸出貿易の健全な発展を図ること」を目的としておりますが、日本経済の発展のためには政府・産業界が緊密に協力して取り組むことが必要であり、日本機械輸出組合としても求められる役割をしっかり果たして参ります。 2024年における組合員の皆様の益々のご発展を祈念するとともに日本機械輸出組合に引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。


以上